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一年

一年前を境に変わってしまった日常、というのが確かに存在している。
一年前に限らず、何かを境に変わってしまう日常、というものはずっと存在してきたし、これからも存在する。
望む望まないに関わらず、存在する。

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あの日を境に、というか、あの日から自分の中の時間が止まってしまった。当たり前だと思っていたものがそうではなかった。いるのが当たり前だった人たちに、もう会えない現実。そこにあった暮らしや人生がどんなに大切だったのか、そこにあった暮らしや人生にどれだけ守られていたのかを、強く思えば思うほど、やり場のない気持ちは、膨らんでゆく。

憶測だ。この種の言葉はかちっと嵌まることなく、すぐに蒸発してゆく。そんな風に思えてならない。わたしは九州に住んでいて、あの震災の現場に居合わせてはいないのだから。
そのまっただ中にいる方々の気持ちに、想像力では決して追いつけない。報道等で見聞きし読むのは、その情報に触れていることであって、それ以上でもそれ以下でもない気がする。情報に触れることは重要だが、想像でわかった気になるなよ、と自分を戒める。追いつける速度ではない。追いつける深さではない。経験した者だけが知る深淵に想像で立とうとしても、それは偽装でしかない。
そんなに容易いものではない。
今日もわたしは自宅で目覚めて、天気が良いなと思い、家族と会話し、部屋の掃除をした。そういう生活を送ったのだ。
たまたま生まれが九州で、九州に住んでいた。東日本には住んでいなかった。それだけで、こんなにも状況が違ってしまっている。それだけで、こんなにも状況が違ってしまう日常を生きている。これは一体なんなのだろう。みんな自分の人生なのに、自分の力が及ばない部分というのが確かに存在している。圧倒的に及ばないものに出会ってしまったあと、それはひとを置き去りにしていく。
自分は今この瞬間もそういう世界に生きているのだと実感する。生まれおちた瞬間から今までずっとそういう世界に生きていて、いつか生涯を終えるときまでそういう世界を出ていくことはない。
この点については、想像ではなく、実感だ。
その実感を持って、祈る。

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by sk_anne | 2012-03-11 19:00 | 真夜中の文箱

演劇集団非常口・しまだの寝癖に覆われた根暗な頭の中です。どうも。


by sk_anne