しまだのあたま

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面影  2.長瀬日菜子、のつづきを含む。

演劇集団非常口第15回公演
「四畳半の翅音」


【あらすじ】
 九州では「胸糸病(きょうしびょう)」という病が流行していた。胸糸菌に感染することで発病する不治の病で、感染者は強制収容される運命にあった。収容施設が建てられたのは九州の南の町。街の中でも施設周辺は「デラシネ区域」(D区域)と呼ばれ、住民たちから敬遠されていた。
 ある日、D区域近くのアパート「日ノ丸荘」に根岸響子が引っ越してくる。響子は、胸糸病に感染し強制収容された後、行方不明になった弟・純平を探していた。
 日ノ丸荘の住人・長瀬日菜子にも尋ね人がいた。失踪した職場の同僚・向井瑞穂だ。日菜子は、純平と瑞穂が恋人同士だったと証言する。そんな折、胸糸病患者の救済団体を名乗る「KLネットワーク」の矢野俊司が響子に近づく。
 さらに、大家・水原志津恵は純平・瑞穂の行方を知っていた…。


(鹿児島公演)4月13日~14日 伊佐市文化会館大ホール特設小劇場
(宮崎公演) 4月27日~28日 都城市総合文化ホール大ホール特設小劇場
公演の詳細・ご予約はこちらからどうぞ→演劇集団非常口ホームページ

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面影 作:島田佳代

≪2.長瀬日菜子≫

蛍光灯が間引きされた廊下は薄暗い。大会議室の建屋へ向かって歩くたびに、死刑場へ向かう囚人の気持ちを想像する。あたしは囚人ではないけれど、まぁ似たようなもんかもしれないと思う。
産業医の炉端先生は決して表情を変えない。内心びくびくしているのはわかっている。本当はこちら側へは来たくないのだ。暑い中、すがるように防護服を着ている。
こちら側。
同じ栄町内でありながら、長寿橋を渡ったこちら側は「デラシネ区域」と呼ばれている。
労働者の地区だ。というか、かつては労働者の地区だった、らしい。鋳物工場、自動車修理工場、縫製工場、印刷所、それらは今や胸糸病感染者の収容施設として機能している。「デラシネ区域」と呼ばれる前から変わることなく稼働しているのがカスミ製菓だ。あたしの職場。あたしと、
・・・そう、あたしの職場だ。
光が一定ではない。耳の後ろがピリピリする。あたしはマスクを外した。紐が神経に触る。そのまま天井を見てげんなりした。
あたしの職場の蛍光灯は間引きされた上に切れかかっていた。
「死にかけとるし・・・」
あまりのことに笑えてくる。すれ違った工員に睨まれた気がした。お疲れ様ですーと言ったら無視された。

大会議室のある建屋と工場は屋根つきの渡り廊下でつながっている。学校みたいな作りだ。
長い廊下を抜けて外に出たら、雨が降っていた。ため息が出た。夕方まで降るのだろうか。傘を持ってきてない。トタン屋根の端っこから雨粒が落ちてゆく。
際限なく、堕ちてゆく。
「日菜子さん、すごい顔しとる。」
「ああ・・・」
瑞穂が会議室の建屋を出て、こちらへ歩いてきていた。歩きながら自分の眉間を指し、日菜子さん皺になるよ、と言って笑う。
「傘持ってきとらんのよ、今日。」
「天気じゃったもんね。よう晴れとったのに。」
「検査、済んだのね。」
「うん。今日の採血は炉端先生じゃった。たぶん日菜子さんの採血も先生よ。」
「え、いつもん看護婦さんじゃなかったのね?」
「あん看護婦さん・・・」
瑞穂は俯いた。
「なんね・・・?」
「感染・・・してしもうたみたいで・・・・」
あたしたちは、落ちてゆく雨の滴を見ていた。ぬかるむ町、景色が雨で霞む。雨音は暴力的だった。
瑞穂は袖を巻くって見せた。青い血管の途中、針を刺した部分に小さな四角いシールが貼られていた。
白い腕。
「血ぃ採られるのにも慣れてしもうたが・・・。」
慣れ、か。
あたしたちは慣れるしかないのかもしれない。慣れて平気になって、押し殺して、押し込めて、諦めて。
瑞穂の白い腕には、毎月針が刺さる。あたしの腕にも刺さる。ここにいる限り、ずっと。
針は、いつか抜けなくなるかもしれない。
「大丈夫よ。」
瑞穂は袖を戻した。
「え・・・」
「ロッカーに置き傘入っとるから。日菜子さんの班、終礼済んだら6時頃ね?」
「あ、うん、たぶん。」
「じゃ、下駄箱んとこで待ち合わせしよう。相合傘じゃ。そしたら、あとでね。」
だから、こんな風に何もなかったように、傘のことを話すしかないのだ。大事なことは、押し込めて。
大事なことは押し込めて。
「瑞穂、」
薄い背中に声をかけた。
瑞穂、
「そこん廊下の蛍光灯切れかかっとるから、総務ん人に言うとって。」
瑞穂は「了解!」と言って、それから「検査がんばってね」と手を振った。
「頑張ることでもなかでしょうが」
手を振り返しながら呟いて、あたしは廊下を渡った。
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by sk_anne | 2013-02-28 23:59 | 四畳半の翅音

雨と吐く

稽古だった。
もう寝るけど、今も雨が降っている。

運転しながら、雨の中に居るのはもうそれだけで戦ってることになると思った。早い話、好きじゃないってことです。雨が。そんなことを考えつつふれせん(大口ふれあいセンター)へ到着。
文化会館閉鎖期間中につき、平日夜はほぼふれせん和室で稽古している。
思いがけないせりふの吐き方なんかに遭遇するのは興味深い。役者さんは想像を超えてくる。このせりふがこう聴こえるのか!書きながら想像してたのより良いし!みたいなことを発見する。

おやすみなさい。
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by sk_anne | 2013-02-26 23:35

まちそわ→稽古

鹿児島市にて、演劇ユニットまちねとそわれ「陶酔と光に満ちた協奏のなかで」を観劇。全6本、既成作品とオリジナル作品が混ざったオムニバスで、目指す方向が明確な印象を受けた。個人的にその方向性と空気が好きだなぁ、と。役者のみなさんが魅力的。
時間の都合で5話まで観て帰宅した。帰りつくのに1時間半かかる無念さ。

帰って、支度して稽古へ。

自身の内側を探る。集中して。その感覚とか感情をひっぱってくる。漏らさずに。
そんな稽古→帰宅。
とても難しい。とても楽しい。で、いやぁ~難しいなぁ・・・と、楽しく思う今日この頃です。
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by sk_anne | 2013-02-25 23:59

スミス&ウエッソン

稽古だった。

スミス&ウエッソンと聞いて、内心「火を噴くぜ」と呟いた。藤沢周だ。小説に好きな文章があって、スミス&ウエッソンが出てくる。読むと、高揚した直後に冷水を浴びせられるような印象を受ける。あのリズム、一瞬にして流れ出る諦念。とても好きな文章だ。

四畳半の翅音、ばりばり稽古中です。
みなさまぜひご来場ください!!

おやすみなさい。
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by sk_anne | 2013-02-24 23:41

稽古の日々へ

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朝から夕方まで稽古だった。
来週から増える。
来月はほぼ毎晩プラス日曜丸一日が続く。
絶対良い舞台にする。
絶対に。
明日夜は鹿演協理事会で鹿児島市へ。
体調管理が最重要課題だったりする。
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by sk_anne | 2013-02-17 23:59

面影  2.長瀬日菜子

演劇集団非常口第15回公演
「四畳半の翅音」


【あらすじ】
 九州では「胸糸病(きょうしびょう)」という病が流行していた。胸糸菌に感染することで発病する不治の病で、感染者は強制収容される運命にあった。収容施設が建てられたのは九州の南の町。街の中でも施設周辺は「デラシネ区域」(D区域)と呼ばれ、住民たちから敬遠されていた。
 ある日、D区域近くのアパート「日ノ丸荘」に根岸響子が引っ越してくる。響子は、胸糸病に感染し強制収容された後、行方不明になった弟・純平を探していた。
 日ノ丸荘の住人・長瀬日菜子にも尋ね人がいた。失踪した職場の同僚・向井瑞穂だ。日菜子は、純平と瑞穂が恋人同士だったと証言する。そんな折、胸糸病患者の救済団体を名乗る「KLネットワーク」の矢野俊司が響子に近づく。
 さらに、大家・水原志津恵は純平・瑞穂の行方を知っていた…。


(鹿児島公演)4月13日~14日 伊佐市文化会館大ホール特設小劇場
(宮崎公演) 4月27日~28日 都城市総合文化ホール中ホール特設小劇場
公演の詳細・ご予約はこちらからどうぞ→演劇集団非常口ホームページ

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面影 作:島田佳代

≪2.長瀬日菜子≫

蛍光灯が間引きされた廊下は薄暗い。大会議室へ向かって歩くたびに、死刑場へ向かう囚人の気持ちを想像する。あたしは囚人ではないけれど、まぁ似たようなもんかもしれないと思う。
産業医の炉端先生は決して表情を変えない。内心びくびくしているのはわかっている。本当はこちら側へは来たくないのだ。暑い中、すがるように防護服を着ている。嫌ならさっさと逃げろよ。
こちら側。
同じ栄町内でありながら、長寿橋を渡ったこちら側は「デラシネ区域」と呼ばれている。
労働者の地区だ。というか、かつては労働者の地区だった、らしい。鋳物工場、自動車修理工場、縫製工場、印刷所、それらは今や胸糸病感染者の収容施設として機能している。

(つづく)
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by sk_anne | 2013-02-14 23:59 | 四畳半の翅音

休暇は終わった

明日からまた走り出す。

目的を果たす。なんとしても、だ。なんとしても。
冷静になりたい。
toe「C」を聴く。

もう、傍から見たら何考えてるのかわからないくらいに、冷静でありたい。
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by sk_anne | 2013-02-11 22:00

なかとば、向田邦子

劇団鳴かず飛ばず「PLAYGIRL!」を観に鹿児島市へ。
オムニバスコント5本を観賞。なかとばさんらしい賑やかな舞台だった。
この「PLAYBOY! PLAYGIRL!」は今月3日から始まっていて、今週、そして来週まで週末を中心に公演中。会場が天文館のタカプラ(商業施設)内ギャラリー。
会場含めた公演形態に新しい可能性を見せてもらった気がする。

タカプラへ行く前にかごしま近代文学館へ寄った。企画展「向田邦子の随筆」が開催されているのだ。
ああ、向田さん。
憧れる。
憧れだ。
ポスターを貰えないか尋ねてみようと思っていたら、展示部屋「ご自由にお取りください」コーナーにあった。

さっそく貼った。
素敵です。
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拝んで頑張ろうと思う。
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by sk_anne | 2013-02-10 19:56 | 真夜中の文箱

面影 1.根岸響子

演劇集団非常口第15回公演
「四畳半の翅音」


【あらすじ】
 九州では「胸糸病(きょうしびょう)」という病が流行していた。胸糸病に感染することで発病する不治の病で、感染者は強制収容される運命にあった。収容施設が建てられたのは九州の南の町。街の中でも施設周辺は「デラシネ区域」(D区域)と呼ばれ、住民たちから敬遠されていた。
 ある日、D区域近くのアパート「日ノ丸荘」に根岸響子が引っ越してくる。響子は、胸糸病に感染し強制収容された後、行方不明になった弟・純平を探していた。
 日ノ丸荘の住人・長瀬日菜子にも尋ね人がいた。失踪した職場の同僚・向井瑞穂だ。日菜子は、純平と瑞穂が恋人同士だったと証言する。そんな折、胸糸病患者の救済団体を名乗る「KLネットワーク」の矢野俊司が響子に近づく。
 さらに、大家・水原志津恵は純平・瑞穂の行方を知っていた…。


(鹿児島公演)4月13日~14日 伊佐市文化会館大ホール特設小劇場
(宮崎公演) 4月27日~28日 都城市総合文化ホール中ホール特設小劇場
公演の詳細・ご予約はこちらからどうぞ→演劇集団非常口ホームページ

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面影 作:島田佳代

≪1.根岸響子≫

あの黄色い花の名前を、私は知らない。
知らないまま、想うだけ想って、いつの間にか大人になった。

中学生の頃、一度だけ調べようとしたことがある。放課後の図書室にいたのは司書の先生だけで、一日分の陽射しが床板に染み込み始めていた。埃が混ざった過去の匂い。昼間の陽射しはすでに遠ざかっている。その名残りの匂いだった。きっと夜には消えてしまう。
本棚の陰で、私は屈みこんだ。床板に手をあてたら人の肌みたいに温かくて、だから、植物図鑑の棚の前へ行ったのだと思う。
古くて分厚い小学館の図鑑だった。ページを開いたら、野あざみが飛び込んできた。
あの棘、鮮やかすぎる色。この場に相応しくない。感じているのは過去の匂いなのに、この色は生命力が強すぎる。
私は怖くなった。黄色い花が記憶よりも鮮やかだったら、瞼の内側にある光景が色褪せてしまうのではないか。
あの、川べりの。
ページを閉じ、もう一度屈みこんだ。図鑑を抱えたまま、陽射しの温もりを掌に集めた。
袖口がすりきれていた。
チャイムが聞こえて、今日が終わってゆくのだと思った。

純平はあの花の名前を知っているだろうか。あの光景を、憶えているだろうか。
まだ、確かめたことはない。
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by sk_anne | 2013-02-09 23:59 | 四畳半の翅音

松たか子

山崎春のパンまつりで松たか子がお皿に取り分けてるサラダが美味しそうだ。トーストが入ってるやつ。あれ、ドレッシングで食べるのかな。
たぶん二十歳くらいだったと思うが、美容室へ行って「松たか子みたいにしたい」と言ったことがある。その頃松たか子は髪が長くて、わたしも髪が長かった。「それは無理よ、はははは〜」と笑われたのをよく憶えている。確かにね。
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by sk_anne | 2013-02-05 21:03