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残される感覚、見送る感覚

2年半前に亡くなった母方のじーちゃんが夢に出てきた。
台所だった。
ハンテンを羽織って、奥のこたつ(実際のじーちゃんちの台所にはこたつは置かれていないんだけど)に寝転んでいた。こちらに背を向けてはいたが間違いなくじーちゃんだった。
ばーちゃんは手前のテーブルに座ってご飯を食べていて、今より若く、元気そうだった。
わたしは今の年齢で、流しのところに立って二人を見ていた。じーちゃんの向こう、居間へ続く障子は閉まっていて、薄暗いなぁと思いながら。茶碗のご飯の白さが際立っていた。
朝起きたら何かが抜け落ちてしまったような心持ちがした。抜け落ちた場所を風が通り抜けて寒いと思っても、一日は始まる。埋める時間も術もない。顔を洗い、食事をとり、支度をして、車を運転し職場へ行き、一日の仕事をこなす。

夢でみた世界は、当たり前すぎてわざわざ「当たり前だ」と認識することもなく、ずっとこのままだと無意識に錯覚し、無邪気に安心していた昔の世界だった。昔確かに経験した世界だった。今望んでも叶わない世界だった。

最近は、すべてが過去になり、やがてなにもかもが終わるのだとよく思う。
今周りにいる人たちはいなくなり、大事にしているものも、なくなったら困るものも要らなくなる。遅かれ早かれ自分も消滅する。そっくりそのまますべてが消滅する。
だから何が起こっても悲しむことはないのだと思いたい。
どうして自分がここにいるのか不思議に思うこともある。だが、生きているからやらなきゃいけないことはある。
顔を洗い、食事をとり、支度をして、車を運転し職場へ行き、一日の仕事をこなす。
わたしは生きているので。
by sk_anne | 2010-12-02 21:20

演劇集団非常口・しまだの寝癖に覆われた根暗な頭の中です。どうも。


by sk_anne